通夜や葬式に参列すると、食事の席に案内されることがあります。 「通夜振る舞い」「精進落とし」という言葉を聞いたことはあっても、それぞれどのような意味があり、どう違うのかわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、通夜や葬式の食事について、その意味や目的、参加する際の基本的なマナーまで、わかりやすく解説します。
通夜の食事「通夜振る舞い」とは
通夜振る舞いは、通夜式が終わった後に参列者に振る舞われる食事のことです。 故人を偲びながら、参列者同士が思い出を語り合う大切な時間として設けられています。
この食事には、故人への供養と、わざわざ足を運んでくださった方々への感謝の意味が込められています。 地域によっては、穢れを祓う「お清め」の意味合いも持つとされています。
通夜振る舞いは、一般的に30分から1時間程度で、着席形式で行われることが多いです。 料理は寿司や煮物、揚げ物など、お膳やお弁当形式で提供されます。
ちょっとしたポイント
通夜振る舞いへの参加は、基本的に遺族の好意を受け入れることが礼儀とされています。 一口でも箸をつけることが供養になるという考え方があるため、勧められたら辞退せずに参加しましょう。
葬式の食事「精進落とし」とは
精進落としは、火葬後や葬儀式・告別式の後に行われる食事です。 本来は四十九日の忌明け後に食べる食事を指していましたが、現在は葬式当日に行うことが一般的になっています。
この食事は、親族や近親者、僧侶、世話役など限られた人のみが参加します。 遺族が日常生活に戻る節目の食事であり、お世話になった方々への感謝を伝える場でもあります。
通夜振る舞いと比べると、精進落としはより本格的な会席料理が出されることが多く、所要時間も1時間半から2時間程度と長めです。
精進落としという名前の由来
精進落としの「精進」とは、肉や魚を避けた質素な食事のことを指します。 かつては忌中の間、遺族は精進料理を食べる習慣がありました。
四十九日の忌明けをもって、通常の食事に戻ることを「精進を落とす」と言ったことが名前の由来です。 現代では四十九日まで精進料理を続ける家庭は少なくなりましたが、葬儀後の食事をこう呼ぶ習慣は残っています。
精進落としの様々な呼び方

精進落としは、地域や宗教によって様々な呼び方があります。 同じ食事を指していても、地域ごとに異なる名称で呼ばれることを知っておきましょう。
お斎(おとき)
「お斎」は、もともと仏教用語で僧侶に振る舞う食事を指していました。 正午に食べる食事という意味もあります。
現在では、法要後の食事全般をこう呼ぶことがあります。 四十九日法要や一周忌などの際に出される食事も「お斎」と呼ばれます。
仕上げ・上げ膳
「仕上げ」「上げ膳」と呼ぶ地域もあります。 これは忌中の期間を仕上げる、精進料理を上げる(終える)という意味から来ています。
葬儀を無事に終えたという区切りの意味が込められた呼び方です。
直会(なおらい)
「直会」は、神道での葬儀後の食事を指す言葉です。 神事の後に神様にお供えしたものを参列者で分け合う習慣に由来しています。
神道の葬儀に参列する場合は、この呼び方を使うことが多いです。
その他の呼び方
「お膳」「会食」「御食事」といった一般的な呼び方をする地域もあります。 また、「お清め」「法要料理」と呼ぶこともあります。
「還骨法要の食事」「火葬後の食事」など、より具体的な説明で呼ばれる場合もあります。 いずれも葬儀後に親族や近親者が集まって食事をするという点では同じです。
確認の仕方
同じ食事でも地域によって呼び方が違うため、訃報連絡や案内状で使われている言葉に合わせるのが無難です。 わからない場合は、葬儀社のスタッフに確認すれば、その地域での一般的な呼び方を教えてもらえます。
通夜振る舞いと精進落としの違い
通夜振る舞いと精進落としは、どちらも葬儀に関連する食事ですが、いくつかの違いがあります。 それぞれの特徴を理解しておくと、参列時に戸惑わずに済みます。
タイミングの違い
通夜振る舞いは通夜式の後に行われます。 一方、精進落としは火葬後や葬儀式・告別式の後に行われます。
つまり、通夜振る舞いは葬儀の前日、精進落としは葬儀当日に行われることが多いということです。
参加者の範囲
通夜振る舞いは、地域によって参加範囲が大きく異なります。 都市部では通夜に参列した方全員が対象となることもありますが、多くの地域では親族のみで行われます。
精進落としは、親族や近親者、僧侶、世話役など限られた人のみが参加します。 一般の参列者が誘われることは少ないですが、故人と特に親しかった場合などに声がかかることもあります。
食事の内容と雰囲気
通夜振る舞いは、お膳やお弁当形式で提供されることが多いです。 寿司や煮物、揚げ物などが盛り合わせになっています。
精進落としは、座って落ち着いて食べる会席料理などが出されることが多いです。 通夜振る舞いよりもゆっくりと時間をかけて、故人を偲ぶ雰囲気になります。
地域の習慣
滋賀県を含む多くの地域では、通夜振る舞いは親族のみで行い、一般参列者には振る舞わないことが一般的です。 また、立食形式よりも着席してお膳形式で食事をすることが多いです。
葬儀の食事の簡素化と粗飯料
近年、家族葬の増加に伴い、葬儀の食事についても変化が見られます。 特に滋賀県内では、食事の簡素化が進んでいる傾向があります。
粗飯料という形
従来は親族に対して通夜振る舞いや精進落としを振る舞うことが一般的でした。 しかし、最近では食事を省略し、代わりに「粗飯料」として現金を渡すケースが増えています。
粗飯料は、本来であれば食事を振る舞うべきところを、現金でお渡しするという意味です。 金額は3千円から5千円程度が一般的です。
簡素化の背景
家族葬が増えた影響で、葬儀全体を簡素に執り行いたいというご家族が増えています。 参列者も親族のみで少人数のため、食事の準備や会場の手配が負担になることもあります。
また、高齢の親族が多い場合、長時間の食事が体力的に厳しいという事情もあります。 粗飯料という形にすることで、それぞれの都合に合わせて食事ができるというメリットもあります。
粗飯料をいただいた場合
親族として参列し、粗飯料をいただいた場合は、遺族の判断を尊重しましょう。 「食事は不要です」という遺族の意向の表れですので、素直に受け取って問題ありません。
お返しなどは不要です。 香典とは別のものですので、混同しないよう注意しましょう。
よくある疑問
粗飯料をいただいて実際に食事をする場合、金額内で収めなければならないということではありません。 あくまでも遺族の気持ちとして受け取り、その後の食事は各自の判断で自由に取ることができます。
通夜振る舞いに参加する場合

通夜振る舞いに誘われた場合、どのように振る舞えば良いのでしょうか。 基本的な流れと心構えを確認しておきましょう。
参加することが基本
通夜振る舞いに誘われた場合、基本的には参加することが礼儀とされています。 断ることは遺族の好意を無下にすることになります。
一口でも箸をつけることが供養になるという考え方があるため、少しでも食べることが大切です。 全く手をつけないのは避けた方が良いでしょう。
滞在時間の目安
通夜振る舞いでは、長居せず30分から1時間程度で退席するのが一般的です。 あまり早すぎても失礼になりますが、長居しすぎて遺族の負担になることも避けましょう。
周囲の様子を見ながら、適切なタイミングで退席することが大切です。 一人が立つと次々に退席し始めることも多いので、その流れに沿って行動すれば問題ありません。
やむを得ず辞退する場合
仕事の都合や体調、遠方からの参列など、やむを得ない事情で辞退する場合もあります。 その際は、理由を簡潔に伝えて丁寧にお断りしましょう。
「お心遣いありがとうございます。申し訳ございませんが、明日早くから仕事がございますので、失礼させていただきます」 このように伝えれば、失礼にはなりません。
実務のヒント
親族や特に親しい間柄だった場合は、少しでも参加してから退席する方が望ましいとされています。 15分程度でも顔を出すことで、遺族への配慮を示すことができます。
精進落としに参加する場合
精進落としは、通夜振る舞いよりも少人数で行われる食事です。 誘われた場合の対応について確認しておきましょう。
誘われることの意味
精進落としは、基本的に親族や近親者など限られた人のみが参加します。 一般の参列者が誘われることは少ないため、声をかけられたということは特別な意味があります。
遺族が特別にあなたを招きたいという意思の表れです。 よほどの事情がない限り、参加することをおすすめします。
所要時間と雰囲気
精進落としの所要時間は、1時間半から2時間程度が一般的です。 通夜振る舞いよりもゆっくりと時間をかけて、落ち着いた雰囲気で行われます。
故人の思い出話をしながら、和やかに過ごすことが期待されています。 ただし、遺族は葬儀で疲れていますので、適度なタイミングで退席することも配慮の一つです。
判断に迷ったら
精進落としへの参加を断るべきか迷った場合は、「ご遺族のお気持ちを優先する」という視点で考えましょう。 遺族が強く希望している場合は参加し、形式的な声かけの場合は丁寧に辞退することもできます。
葬儀の食事で出される料理
通夜と葬式では、提供される料理の内容や形式が異なります。 それぞれの特徴を理解しておきましょう。
通夜振る舞いの料理
通夜振る舞いでは、寿司や煮物、揚げ物などが、お膳やお弁当形式で提供されることが多いです。 一人ずつに用意された料理を、座って食べる形式が一般的です。
飲み物は日本酒やビールが一般的ですが、ソフトドリンクも用意されています。 お酒が出される場合もありますが、飲みすぎには十分注意が必要です。
あくまでも故人を偲ぶ場であることを忘れず、適度な量にとどめましょう。
精進落としの料理
精進落としは、通夜振る舞いよりも本格的な会席料理が出されることが多いです。 お膳形式や懐石料理など、座って食べる形式が一般的です。
ただし、近年は参加者の負担を考えて、通夜振る舞いと同様の料理にすることも増えています。 形式よりも、故人を偲ぶ気持ちが大切だという考え方が広まっています。
葬儀の食事で避けられる食材
葬儀の食事では、鯛や伊勢海老などの祝い事を連想させる食材は避けられます。 また、「四つ足の動物」の肉も使わない地域がありますが、近年はそこまで厳格ではなくなっています。
地域や宗教によって食材の選び方が異なることもあるため、葬儀社が適切に配慮して料理を手配します。
ちょっとしたポイント
アレルギーや体調不良で食べられないものがある場合は、遺族や葬儀社のスタッフに一言伝えておくと配慮してもらえます。 「申し訳ございませんが、体調の関係で少しだけいただきます」と伝えれば、失礼にはなりません。
食事中の会話について

葬儀の食事では、どのような話題を選ぶかも大切です。 故人を偲ぶ場にふさわしい会話を心がけましょう。
適切な話題
故人の思い出話、故人の人柄を偲ぶエピソード、遺族への励ましの言葉などが適切です。 故人が好きだった食べ物や趣味の話など、温かい思い出を共有しましょう。
「○○さんは本当に明るい方でしたね」「いつも笑顔で接してくださいました」 このように、故人の良い面を振り返る話題は、遺族にとっても慰めになります。
避けるべき話題
死因や病状について詳しく尋ねることは避けてください。 遺族の心情に配慮した話題選びが大切です。
また、政治や宗教の話、他人の噂話、過度に明るすぎる話題も避けましょう。 自分の自慢話や仕事の話も場にそぐわないため、控えた方が良いでしょう。
大声で笑ったり、お酒に酔って騒いだりすることは厳禁です。 あくまでも故人を偲ぶ場であることを忘れないようにしましょう。
職場での実例
会社関係で参列した場合、仕事の話題になりがちですが、故人にまつわるエピソードを中心にしましょう。 「○○さんはいつも丁寧に教えてくださって」といった、職場での故人の様子を話すことで、遺族も喜ばれます。
食事代について
葬儀における食事代について、参列者が支払う必要があるのか疑問に思う方もいるでしょう。 基本的なルールを確認しておきます。
参列者は支払い不要
通夜振る舞いも精進落としも、基本的に喪主側が費用を負担します。 参列者が支払うことはありません。
香典を渡している場合、食事代も含まれていると考えて問題ありません。 別途食事代を支払う必要はありませんので、安心してください。
ただし、香典を辞退されている葬儀で食事に招かれた場合は、遺族の好意として素直に受け取りましょう。 無理に何かを渡そうとする必要はありません。
通夜振る舞いと精進落としの費用相場
通夜振る舞いの費用は、一人あたり2,000円から5,000円程度が相場です。 参加人数によって総額は大きく変わります。
精進落としは、一人あたり5,000円から10,000円程度が相場です。 より本格的な料理が出されるため、通夜振る舞いよりも高額になる傾向があります。
食事後の退席について
食事が終わって退席する際も、基本的なマナーを守りましょう。 スムーズに退席できるよう、流れを確認しておきます。
退席時の挨拶
「本日はありがとうございました。お疲れのところ恐縮です」 「故人のご冥福をお祈りいたします」 このように簡潔に挨拶して退席します。
長々と話し込むことは避け、遺族の負担にならないよう配慮しましょう。 遺族は多くの参列者への対応で疲れていますので、簡潔な挨拶が好ましいです。
タイミングの見極め方
通夜振る舞いの場合は、30分から1時間程度が退席の目安です。 精進落としの場合は、1時間半から2時間程度が一般的です。
あまり早すぎても失礼になりますが、長居しすぎないことも大切です。 周囲の様子を見ながら、自然なタイミングで退席しましょう。
まとめ:葬儀の食事は故人を偲ぶ大切な時間
通夜や葬式での食事は、故人を偲び、参列者同士が思い出を共有する大切な時間です。 通夜振る舞いは通夜後に親族中心に振る舞われる食事で、精進落としは葬式後に親族や近親者を中心に行われる食事です。
それぞれに異なる意味と目的があり、参加する際の心構えも少し異なります。 誘われた場合は基本的に参加し、やむを得ず辞退する場合は丁寧に理由を伝えましょう。
近年は家族葬の増加に伴い、食事の簡素化や粗飯料という形式も増えています。 地域によって習慣が異なるため、迷ったときは周囲の様子を見たり、葬儀社に確認したりすることをおすすめします。
故人を偲ぶ気持ちを大切に、遺族への配慮を忘れずに過ごすことが何よりも重要です。
滋賀葬祭では、ご遺族様に寄り添ったサポートを心がけております。通夜振る舞いや精進落としの手配、粗飯料のご相談など、葬儀の食事に関するご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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