突然の訃報を受けたとき、遺族の方にどのような言葉をかければよいか迷われる方は多いものです。
悲しみに暮れる遺族に対して、適切な言葉で慰めとお悔やみの気持ちを伝えることは、とても大切なことです。
この記事では、遺族への声のかけ方について、基本的なお悔やみの言葉から、関係性別の配慮すべきポイント、避けるべき表現まで詳しく解説いたします。
お悔やみの言葉の基本
最も一般的なお悔やみの言葉
「この度はご愁傷さまでした」
最も標準的で、どのような関係性でも使える万能なお悔やみの言葉です。
年齢や立場に関係なく、安心して使用できます。
「心からお悔やみ申し上げます」
より丁寧な表現で、特に目上の方や格式を重んじる場面で適しています。
書面でも口頭でも使用できます。
「お疲れさまでした」
関西地方でよく使われる表現で、「ご苦労様でした」という意味合いを含みます。
地域によって使い分けると良いでしょう。
簡潔さが大切な理由
お悔やみの言葉は、長々と話すよりも簡潔で心のこもった一言の方が遺族の心に届きます。
悲しみの中にいる遺族の負担にならないよう、短く、でも真心を込めて伝えることが重要です。
「ご愁傷さま」という言葉は、もともと「愁い(うれい)を傷める」、つまり「悲しみを深く感じる」という意味から来ています。相手の悲しみに共感し、自分も同じように悲しんでいるという気持ちを表す、日本語らしい美しい表現です。
また「お悔やみ」は「悔しみ」から来ており、故人を失った悔しさや惜しさを表しています。これらの言葉には、日本人の細やかな感情表現が込められているのです。
関係性別の適切な声のかけ方
家族・親族の場合
配偶者を亡くした方への言葉
- 「この度は誠にご愁傷さまでした。心からお悔やみ申し上げます」
- 「何かお手伝いできることがありましたら、遠慮なくお声をかけてください」
- 「○○さんのご冥福を心よりお祈りいたします」
親を亡くした方への言葉
- 「この度はご愁傷さまでした。お疲れ様でした」
- 「心からお悔やみ申し上げます。お体をお大事になさってください」
子供を亡くした方への言葉
この場合は特に慎重な配慮が必要です。
- 「この度は誠にご愁傷さまでした」(基本的なお悔やみの言葉に留める)
- 「言葉もありません」(無理に励まさず、悲しみに寄り添う)
友人・知人の場合
親しい友人の場合
関係性によってはもう少し温かみのある表現も可能です。
- 「この度はご愁傷さまでした。何かできることがあれば何でも言って」
- 「○○さんにはお世話になりました。心からお悔やみ申し上げます」
それほど親しくない知人の場合
- 「この度はご愁傷さまでした」
- 「心からお悔やみ申し上げます」
遺族への声のかけ方は、故人との関係性だけでなく、遺族との関係性も考慮する必要があります。
配慮すべきポイント
- 年齢差:年上の方には丁寧語を徹底
- 社会的立場:上司や恩師にはより格式のある表現を
- 親しさの度合い:距離感を間違えないよう注意
- 遺族の状況:疲労度や精神状態を察する
特に普段あまり話したことのない遺族の方には、基本的なお悔やみの言葉に留めることが無難です。
職場関係の場合
部下や同僚の場合
- 「この度はご愁傷さまでした。何か会社でできることがあれば相談してください」
- 「お疲れ様でした。ゆっくりお休みを取ってくださいね」
上司の場合
- 「この度は誠にご愁傷さまでございました」
- 「心からお悔やみ申し上げます。○○様のご冥福をお祈りいたします」
お客様・取引先の場合
- 「この度は誠にご愁傷さまでございました」
- 「謹んでお悔やみ申し上げます」
故人との思い出を話すときの注意点

適切な思い出話のタイミング
通夜振る舞いや控室で
正式な儀式中ではなく、比較的リラックスした雰囲気のときに故人の思い出を話すことは、遺族の慰めになることがあります。
短く、温かい思い出を
長話は避け、故人の人柄がしのばれるような温かいエピソードを短く話すのがよいでしょう。
思い出話の例
良い例
- 「○○さんはいつも笑顔で、お会いするたびに元気をいただいていました」
- 「○○さんの優しいお人柄に、家族一同いつも助けられていました」
- 「○○さんとの楽しい思い出を、私たちは忘れません」
避けるべき例
- 病気や事故の詳細に関する話
- 故人の欠点や失敗談
- 過度に明るすぎる話題
適切な思い出話は、遺族にとって大きな慰めになります。
精神的なケアの専門家によると、愛する人を失った悲しみの中で、その人が他の人にも愛され、良い思い出を残していたことを知ることは、遺族の心の支えになるといわれています。
思い出話が与える効果
- 故人が愛されていたことの確認
- 故人の人生に意味があったという実感
- 孤独感の軽減
- 悲しみの共有による心の軽減
ただし、これはタイミングと内容が適切な場合に限られます。
絶対に避けるべき言葉と表現
死を直接的に表現する言葉
避けるべき表現
- 「死ぬ」「死亡」
- 「生きている間」
- 「あの世」「この世」
適切な表現
- 「ご逝去」「お亡くなりになる」
- 「ご生前」
- 「天国」「ご冥福」
忌み言葉(いみことば)
葬儀では、不幸が重なることを連想させる「重ね言葉」や「繰り返しの言葉」は避けるべきとされています。
避けるべき重ね言葉
- ますます、たびたび、かえすがえす
- いよいよ、さらに、また
- 重々、次々、続々
宗教的な配慮が必要な表現
仏教以外では避けるべき表現
- 「成仏」「供養」「冥福」
- これらは仏教特有の概念のため、他の宗教では使用しない
キリスト教の場合
- 「安らかな眠りをお祈りします」
- 「神様の御許で安らかにお過ごしください」
忌み言葉の概念は伝統的な日本の風習ですが、現代では厳格に守られないケースも増えています。
特に若い世代や都市部では、あまり気にしない傾向もあります。
しかし、年配の方や伝統を重んじる地域では今でも重要視されているため、以下の対応が無難です。
現代的な対応
- 分からない場合は基本的なお悔やみの言葉に留める
- 地域の慣習や遺族の価値観を事前に確認
- 無理に複雑な表現を使わず、シンプルに
- 心のこもった態度の方が言葉より重要
シチュエーション別の声のかけ方

受付でのお悔やみ
受付での基本的な流れ
- 記帳
- 香典の提出
- 簡潔なお悔やみの言葉
受付での言葉の例
- 「この度はご愁傷さまでした」
- 「心からお悔やみ申し上げます」
受付は多くの参列者が並んでいることが多いため、長話は避け、簡潔に済ませることが大切です。
遺族と直接話す機会がある場合
通夜振る舞いなどで
もう少し踏み込んだ会話も可能ですが、相手の状況を見ながら調整しましょう。
言葉の例
- 「○○さんにはいつもお世話になっておりました」
- 「何かお手伝いできることがございましたら、お気軽にお声をかけください」
- 「お疲れが出ませんよう、お体をお大事になさってください」
遺族への慰めは、言葉だけでなく態度や表情も重要です。
大切な非言語メッセージ
- 表情:穏やかで慈愛に満ちた表情
- 声のトーン:低めで落ち着いた声
- 目線:適度なアイコンタクト
- 姿勢:背筋を伸ばし、敬意を示す姿勢
避けるべき態度
- 過度に明るい表情
- 高い声でのおしゃべり
- きょろきょろと周りを見回す
- そわそわした態度
時として、言葉よりもこれらの態度の方が遺族の心に深く響くことがあります。
後日の連絡やお悔やみ
葬儀に参列できなかった場合
電話での連絡
葬儀後しばらくしてから、遺族の都合を確認して電話することも一つの方法です。
電話での言葉の例
- 「先日は参列できず申し訳ございませんでした。改めてお悔やみ申し上げます」
- 「○○さんのご冥福を心よりお祈りしております」
弔電を送る場合
弔電の基本的な文例
- 「ご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます」
- 「在りし日のお姿を偲び、心からご冥福をお祈りいたします」
手紙でのお悔やみ
手紙の場合の注意点
- 便箋は白無地を選ぶ
- 毛筆または筆ペンで書く
- 簡潔で心のこもった文章にする
現代では、従来の形にとらわれない様々なお悔やみの方法が生まれています。
新しい形のお悔やみ
- SNSでの追悼メッセージ
- オンライン献花
- メールでのお悔やみ(親しい関係の場合)
注意すべき点
- 遺族の価値観や年代を考慮する
- パブリックな場でのメッセージは慎重に
- プライベートな手段の方が適切な場合が多い
ただし、基本的には直接的なお悔やみの方が心が伝わりやすいとされています。
遺族の立場を理解した配慮
遺族が置かれている状況
精神的な負担
- 深い悲しみの中にいる
- 様々な手続きに追われている
- 多くの人への対応で疲労している
- 感情的に不安定な状態
物理的な負担
- 葬儀の準備や運営
- 参列者への対応
- 事務手続き
- 体力的な疲労
配慮すべきポイント
時間への配慮
- 長話は避ける
- 相手のペースに合わせる
- 忙しそうなときは遠慮する
内容への配慮
- 複雑な話は避ける
- 判断を求めるような話は後日に
- 明るい話題も適度に留める
近年、グリーフケアという概念が注目されています。
グリーフとは、大切な人を失ったときの自然な反応のことで、以下のような段階があるとされています。
グリーフの段階
- 否認:現実を受け入れられない
- 怒り:不合理な怒りを感じる
- 取引:何かと引き換えに取り戻したいと願う
- 抑うつ:深い悲しみに沈む
- 受容:現実を受け入れる
遺族はこれらの段階を行ったり来たりしながら、時間をかけて悲しみと向き合います。私たちにできることは、その過程を理解し、寄り添うことです。
文化・宗教別の配慮
仏教の場合
一般的な表現
- 「ご冥福をお祈りします」
- 「お悔やみ申し上げます」
- 「ご愁傷さまでした」
神道の場合
適切な表現
- 「御霊のご平安をお祈りします」
- 「ご愁傷さまでした」
避けるべき表現
- 「冥福」「成仏」などの仏教用語
キリスト教の場合
適切な表現
- 「安らかな眠りをお祈りします」
- 「神様の御許で安らかにお過ごしください」
- 「お慰めをお祈りします」
避けるべき表現
- 「冥福」「供養」などの仏教用語
現代の日本では、宗教的背景が多様化しています。
現代の特徴
- 無宗教の葬儀の増加
- 複数の宗教的背景を持つ家族
- 個人の信念を重視した葬儀
対応方法
- 事前に確認できる場合は確認する
- 分からない場合は宗教色のない表現を使う
- 「お悔やみ申し上げます」「ご愁傷さまでした」は万能
よくある質問と対処法
Q1: 何と言ってよいか分からず、黙ってしまいました
A: 無理に言葉を探す必要はありません。心からの一礼と「ご愁傷さまでした」だけでも十分気持ちは伝わります。大切なのは真心です。
Q2: 遺族の方が泣いていて、どう声をかければよいか分かりません
A: 無理に慰めたり、泣き止ませようとしたりする必要はありません。そっと側にいるだけでも支えになります。ハンカチを差し出すなど、さりげない気遣いが効果的です。
Q3: 故人との関係が浅いのに、参列してよいか迷っています
A: 故人や遺族への気持ちがあれば、関係の深さは問題ありません。「お世話になりました」「お疲れさまでした」など、シンプルなお悔やみの言葉で十分です。
お悔やみの場面で言葉に詰まってしまうのは自然なことです。
そんなときは
- 深呼吸をして落ち着く
- 「この度はご愁傷さまでした」の基本に戻る
- 無理に長く話そうとしない
- 真心を込めた一礼で気持ちを表現
覚えておきたいこと
- 完璧な言葉を求めすぎない
- 相手も理解してくれている
- 気持ちは言葉以上に大切
- 後から手紙やメールでフォローすることも可能
まとめ

遺族への声のかけ方で最も大切なのは、完璧な言葉を見つけることではなく、真心を込めて相手の悲しみに寄り添うことです。
基本の心構え
- 簡潔で心のこもった言葉を選ぶ
- 相手の立場や状況を理解する
- 無理に励まそうとしない
- 真心を込めた態度で接する
覚えておきたい基本の言葉
- 「この度はご愁傷さまでした」
- 「心からお悔やみ申し上げます」
- 「ご冥福をお祈りします」
避けるべきこと
- 長話や込み入った内容
- 忌み言葉や不適切な表現
- 宗教的配慮を欠いた言葉
- 自分の都合を優先した行動
大切にしたいこと
- 相手の気持ちに寄り添う姿勢
- 時と場をわきまえた行動
- 継続的な気遣い
- 故人への敬意
言葉は心を伝える手段の一つに過ぎません。遺族の方々の悲しみに共感し、そっと寄り添う気持ちこそが、最も大切なお悔やみの表現なのです。
滋賀葬祭では、ご遺族様に寄り添ったサポートを心がけております。お悔やみの言葉や葬儀に関するご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

