葬儀での言葉遣い・禁句
目次
葬儀での言葉遣いの重要性
葬儀は故人を偲び、遺族に寄り添う大切な場です。適切な言葉遣いは、故人への敬意と遺族への思いやりを表現する重要な要素です。
不適切な言葉を使ってしまうと、意図せず遺族を傷つけたり、場の雰囲気を損ねたりする可能性があります。葬儀にふさわしい言葉遣いを心がけることで、温かく心のこもった葬儀にすることができます。
忌み言葉について
重ね言葉(不幸が重なることを連想させる)
避けるべき重ね言葉
- 「重ね重ね」 → 「重ねて」
- 「たびたび」 → 「度々のご厚情」→「いつものご厚情」
- 「いよいよ」 → 「ますます」→「より一層」
- 「ますます」 → 「より一層」「さらに」
- 「くれぐれも」 → 「どうぞ」
- 「再び」 → 「改めて」
- 「再度」 → 「改めて」
- 「また」 → 「改めて」
- 「追って」 → 「後日」
- 「続く」 → 該当する適切な表現に置き換え
直接的な死の表現
避けるべき直接的な表現
- 「死ぬ」「死亡」 → 「亡くなる」「永眠」「旅立つ」
- 「生きていた頃」 → 「生前」「お元気だった頃」
- 「死体」 → 「ご遺体」「お体」
- 「生死」 → 「生死」は避け、状況に応じて適切な表現を選ぶ
生死や苦痛を連想させる言葉
避けるべき表現
- 「苦しい」 → 「大変」「つらい」
- 「痛い」 → 「おつらい」
- 「消える」 → 「お別れ」
- 「終わり」 → 「お別れ」「最後」
- 「切る」 → 該当する場面を避けるか、別の表現に
宗教別の言葉遣い
仏教での言葉遣い
適切な表現
- 「お悔やみ申し上げます」
- 「安らかにお眠りください」
- 「ご供養させていただきます」
宗派によって注意が必要な表現
- 「ご冥福をお祈りいたします」:浄土真宗では使わない(即往生の教えのため)
- 「成仏されますように」:浄土真宗では使わない(既に仏になっているとする教えのため)
神道での言葉遣い
適切な表現
- 「お悔やみ申し上げます」
- 「御霊安らかにお鎮まりください」
- 「ご平安をお祈りいたします」
使用する用語
- 御霊(みたま)、鎮魂、平安
宗派がわからない場合の安全な表現
どの宗教でも使える表現
- 「お悔やみ申し上げます」
- 「心よりお悔やみ申し上げます」
- 「安らかにお眠りください」
- 「お疲れ様でした」(故人に対して)
- 「ありがとうございました」(故人への感謝)
避けた方が安全な表現
- 「ご冥福」「成仏」:浄土真宗では使わない
- 「供養」:神道・キリスト教では使わない
- 「御霊」:仏教・キリスト教では使わない
キリスト教での言葉遣い
適切な表現
- 「お悔やみ申し上げます」
- 「神様の御許で安らかに」
- 「天に召されました」
- 「永遠の安息をお祈りいたします」
使用する用語
- 召天、帰天、永遠の安息、神の御許
避けるべき表現
- **「ご冥福」「供養」「成仏」**などの仏教・神道用語
- 「ご愁傷様」(使わない方が良い)
適切な敬語・丁寧語

基本的な敬語
故人について
- 「故○○様」(最も丁寧)
- 「○○さん」(親しみやすく)
- 「お父様」「お母様」(遺族の立場から)
遺族について
- 「ご遺族の皆様」
- 「ご家族の皆様」
- 「○○様(喪主のお名前)」
感謝・お悔やみの表現
感謝の表現
- 「ありがとうございます」
- 「恐れ入ります」
- 「恐縮です」
- 「お心遣いをいただき」
お悔やみの表現
- 「お悔やみ申し上げます」
- 「心よりお悔やみ申し上げます」
- 「謹んでお悔やみ申し上げます」
場面別の適切な言葉遣い
受付での言葉遣い
参列者として
- 「本日はお忙しい中、ありがとうございます」
- 「心よりお悔やみ申し上げます」
- 「ご丁寧にありがとうございます」(香典を渡す際)
受付係として
- 「お忙しい中、ありがとうございます」
- 「恐れ入ります」(香典を受け取る際)
- 「心ばかりの品です」(粗供養をお渡しする際)
挨拶での言葉遣い
喪主・遺族として
- 「生前は大変お世話になりました」
- 「温かくしていただき」
- 「心から感謝しております」
- 「今後ともよろしくお願いいたします」
参列者として
- 「お疲れ様でした」(葬儀後)
- 「ありがとうございました」
- 「お気をつけてお帰りください」
弔問での言葉遣い
基本的な流れ
- 「この度は誠にご愁傷様でした」
- 「心よりお悔やみ申し上げます」
- 「何かお手伝いできることがございましたら」
- 「お体をお大事になさってください」
現代語・カジュアル表現の注意
避けるべき現代語
カジュアルすぎる表現
- 「お疲れ」 → 「お疲れ様でした」
- 「すみません」 → 「申し訳ございません」
- 「ちょっと」 → 「少し」「若干」
- 「全然」 → 「全く」「少しも」
ビジネス用語の注意
- 「お世話様です」 → 葬儀では使わない
- 「ご苦労様」 → 目上の方には使わない
- 「頑張って」 → 「お体を大切に」
SNS・メール用語の注意
絶対に使ってはいけない表現
- 絵文字・顔文字
- **「(笑)」「www」**などのネット用語
- 「お疲れ様です!」(感嘆符は避ける)
- **「〜的な」「〜みたいな」**などの曖昧な表現
年齢・関係性による使い分け
目上の方への言葉遣い
より丁寧な表現
- 「謹んでお悔やみ申し上げます」
- 「恐れ入ります」
- 「失礼いたします」
- 「ありがたく存じます」
同世代・親しい関係
親しみやすい表現
- 「お悔やみ申し上げます」
- 「ありがとうございます」
- 「お疲れ様でした」
- 「お気をつけて」
子供・若い方への配慮
わかりやすい表現
- 「ありがとう」(年下の子供には)
- 「お疲れ様」(親しみやすく)
- 難しい敬語は避けて、心のこもった表現を
地域による違い
関東・関西の違い
関東
- より丁寧な敬語を好む傾向
- **「恐れ入ります」**をよく使う
- 形式を重視した表現
関西
- 親しみやすい表現も受け入れられる
- **「ありがとうございます」**中心
- 温かみのある表現を好む
地方特有の表現
地域の慣習を尊重
- 方言の使用:地域によっては方言も適切
- 地域特有の挨拶:その地域の慣習に合わせる
- 年配の方の言葉遣い:地域の年長者の表現を参考に
よくある間違い
敬語の間違い
間違った敬語
- 「ご苦労様でした」(目上の方に使うのは不適切)
- 「了解しました」 → 「承知いたしました」
- 「すみません」 → 「申し訳ございません」
宗教の混同
よくある間違い
- **神道の葬儀で「ご冥福」**を使う
- **キリスト教の葬儀で「成仏」**を使う
- 無宗教の葬儀で宗教用語を使う
タイミングの間違い
不適切なタイミング
- 受付で長話をする
- 挨拶中に私語をする
- 式中に大きな声で話す
言葉遣いのチェックポイント
事前準備
確認事項
- 故人の宗教を確認
- 地域の慣習を調べる
- 関係性に応じた敬語レベルを決める
- 挨拶の内容を事前に考える
当日の注意
気をつけるポイント
- 声のトーン:落ち着いた低めの声
- 話すスピード:ゆっくりと明瞭に
- 表情:穏やかで誠実な表情
- 聞く姿勢:相手の話に真摯に耳を傾ける
まとめ
葬儀での言葉遣いは、故人への敬意と遺族への思いやりを表現する大切な要素です。忌み言葉を避け、宗教や地域の慣習に配慮した適切な表現を使うことで、温かく心のこもった葬儀にすることができます。
最も重要なのは、技術的な正確さよりも、心からの誠意を込めて話すことです。完璧な敬語を使えなくても、故人を偲ぶ気持ちと遺族への思いやりがあれば、その気持ちは必ず伝わります。
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